ひとふた奇譚
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千枝

(……ん?)

 購買で買った日替わりサンドとジュースをカウンターに並べていると、図書室の奥から物音がした。
 誰もいないと思っていたけれど、すでに利用者がいたのかもしれない。
 確認しようとカウンターを出て見に行くと――

千枝

「……艮藤くん?」

 艮藤くんが窓から入ってこようとしていた。
 私に気づいた艮藤くんは、相変わらずの無表情でこちらを見返してくる。

千枝

「何やってるの?」

艮藤

「……当番なので」

 想定外の答えだった。

千枝

(話がかみ合ってない気がする……)

千枝

「えっと、どうして、窓から入ってきたの? 大体、ここ、二階なのに、どうやって?」

艮藤

「急いでいたので……そこの木を、伝って」

 そう言って、艮藤くんは身軽に室内に降り立った。

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